PRO V1 25 YEARS OF INNOVATION vol.2
圧倒的「信頼」の理由
2000年10月の「インベンシスクラシック」でプロV1が驚くべきスタートを決めた背景には“100人の行進”と呼ばれる事前のプロモーション活動があったと、現在タイトリスト ゴルフボールの社長を務めるメリールー・ボーンは回想する。
プレーヤーは何も諦めなくていい
二律背反を覆したプロV1の革命
2000年の夏、タイトリストゴルフボールの社長であったウォーリー・ユーラインは、当時のゴルフボールR&Dの責任者であるビル・モーガン、ツアープロモーション責任者のマック・フリッツ、R&Dツアーリサーチ担当のフォーディ・ピッツ、そしてブランドコミュニケーションの責任者だったメリールー・ボーンを伴って、毎週のようにPGAツアーの練習ラウンドに赴いた。目的は開発中の新しいウレタンカバーソリッドボール、つまり後のプロV1をトッププレーヤーがどう評価するかを直接聞くためである。
「私たちは100人近くのプレーヤーとともにフェアウェイを歩きました。プレーヤーからの反響は圧倒的で、とくにその飛距離性能に誰もが驚いていました。当時人気があった『ツアーバラタ』、『プロフェッショナル』はショートゲームでのスピン性能に優れている反面、ロングゲームではスピンを抑えきれずに飛距離を犠牲にせざるを得ない面がありました。スピンコントロール性能を重視すれば飛距離が落ち、飛距離性能を優先すればショートゲームが難しくなる、という宿命にあったのです。しかし、プロV1はプレーヤーに我慢を強いる要素がありませんでした。ロングゲームで突出した飛距離を実現する一方で、サイドスピンは最小限。ショートゲームではしっかりスピンが入ってコントロールできる。まさにベストと言えるゴルフボールが誕生したのです」(メリールー・ボーン)
スキルが高く、テクニックで低スピン弾道を生み出せるツアープレーヤーにとって、ショートゲームでのスピンコントロールに優れる『ツアーバラタ』や『プロフェッショナル』がベストパフォーマンスボールと考えられてきたが、プロV1の圧倒的飛距離を目の当たりにしたトッププレーヤーの反応が、決してそうではないのだと雄弁に語っていた。“一日も早くこのボールを試合で使いたい!”、彼らもまた飛んで、止まり、そして手応えのいいトータルバランスに秀でたゴルフボールを求めていたのである。
PRO V1(2000年モデル)
ソフトで薄いウレタンエラストマーカバーでバラタカバーを上回るスピン性能と耐久性を発揮。反発性の高い大口径コアとアイオノマーのケース層の組み合わせによって高い反発性能とロングゲームでのスピン抑制を実現。
次々と塗り替えられる最小ストローク記録。
飛んで・止まるプロV1がゴルフを変えた瞬間。
2000年夏の“100人の行進”、10月のPGAツアー初投入を経た2001年、プロV1プレーヤーは開幕からトーナメント記録を次々と塗り替えていく。まずブラッド・ファクソンが『ソニーオープン』で72ホールの最小ストローク記録に並び、マーク・カルカベッキアが『フェニックスオープン』で36ホール、54ホール、72ホールの最小ストローク記録を更新。デービス・ラブIIIも『AT&Tペブルビーチナショナルプロアマ』最終日に9アンダー「63」の最小ストロークを記録して優勝を果たす。試合を重ねるごとに伸びる圧倒的な使用者数、そして使用プレーヤーがロースコア記録を連発。この事態に3月、大手新聞社USAトゥデイは一面で、“ゴルフをひっくり返す大革命”とプロV1の本格デビューを報じた。
アクシネットカンパニーを創業したフィル・ヤングは、“There is always a reason for everything(すべてのことには常に理由がある)”という言葉をよく使ったそうだが、プロV1が、トッププロを一瞬で虜にしたのにもやはり、確固たる理由があった。
「2001年のPGAツアーで『ツアーバラタ』や『プロフェッショナル』を使用していたプレーヤーはほんの数名、おそらく6名ほどだったと思います。それほど一気にツアーでの勢力図は変わってしまった。一般市場でもプロV1は品薄となり、オークションに高額出品する人も現れました。コースではプロV1を無くすまいと20分もボール探しをする人もいたのです」(メリールー・ボーン)
2001年5月、タイトリストはプロV1の100万ダース出荷を達成。9月には200万ダース、翌年1月には300万ダース目のプロV1が出荷された。プロだけでなくスコアアップを望むすべてのゴルファーに愛されるゴルフボールは、こうして大きな一歩を踏み出した。
「プロV1のVは、Veneer(積層)に由来しています」
「飛距離とスピンコントロールを“トレードオフ” しない、プロV1 の性能はウレタンカバーとコアの間に存在するケース層(中間層)が大きな役割を果たしています。ケース層は、カバーから浸透した水分をバリアする一方で、ケース層の厚み、硬さ、あるいは素材を変えることで必要なスピン量にコントロールすることが可能なのです。プロV1 のプロは「Professional」から、1は試作品第一号の意味、そしてV は「Veneer(積層)の頭文字から来ています」