「ボーケイ・デザイン ウェッジをもっと知る」#17
“バウンスの役割とは?”
フィッター三瓶がよくあるウェッジの誤解を解説!
ソールにバウンス角をつけると、
なぜウェッジショットがやさしくなるのか?
今回は前回のコラム#16の続編として、ウェッジに付けられたバウンスの効果、役割についてさらに詳細に説明していきます。ボブ・ボーケイがなぜ「Bounce is your Friend」と繰り返し言うのか。その真意について、引き続き、専任フィッターの三瓶大輔がご説明します。
「バウンス。簡単に説明するとトレーリングエッジ(ソールの後ろ側)の出っ張りということになります。ソール後部が地面方向に迫り出すように角度がつけられており、この角度が多いほどバウンス角が大きい“ハイバウンス”、角度が少なくフラットに近いほど、バウンス角度が小さい“ローバウンス”タイプと呼ばれます。ハイバウンスウェッジではソール後部が地面方向に出っ張っているため、どうしてもこれがスムーズな抜けの障害になると感じる方も少なくないようです。バウンスが地面に当たり、跳ねたり、芝生に触れて突っかかったりしてしまう。そうイメージする方が意外に多いのです」(三瓶)
インパクトでヘッドがうまく抜けない! 突っかかる! そう感じたことのあるゴルファーは多いでしょう。しかし、ヘッドがうまく抜けていかないケースでは、ソール後部のトレーリングエッジ(=バウンス)ではなく、ソールの前側(=リーディングエッジ)から接地しているケースがほとんどだと三瓶は説明します。
「ナイフでいうところの“刃先”をリーディングエッジとします。ダウンスイングからインパクトに向かって鋭角なスイング軌道(ダウンブロー)で入ってきたヘッドは、刃先から地面に刺さるように入っていきます。そして何もウェッジのソールに工夫を施していなければ、そのままどんどん地中に潜るように進みます。この結果、ある地点でヘッドが進めなくなり、ヘッドの出口がない状態に陥ってしまいます。これが本当の“突っかかった”状態です」(三瓶)
いよいよここで“バウンス”が登場します。
「ダウンスイングからインパクトに向かって鋭角なスイング軌道(ダウンブロー)でヘッドが入ってくる。ここまでは先ほどと同じです。しかし、今度はウェッジのソールにある工夫を施します。ソール後方に向かって付けられたバウンス角をつけるのです。バウンスは地面に対して潜っていこうとするヘッドに対し、トレーリングエッジを当てる(抵抗とする)ことで、ヘッドの進む方向を下ではなく、前(振り抜き)方向へと変えてくれる効果を狙っています。つまり、バウンスはもともとヘッドの突っかかり解消のために考案された先人の知恵であり、これが“突っかかる”ことはあり得ないのです」(三瓶)
さらに、バウンスの役割をシンプルにイメージしていただくために、バンカーショットを例にして説明を続けます。
「バンカーはゴルフコースのあらゆる場所の中で、最も地面が柔らかいライコンディションです。そのため、バウンスが小さいウェッジではヘッドが深く潜ってしまい、ボールまでヘッドを届かすことが難しくなります。ボールにインパクトパワーを伝えられないのですから、バンカーから脱出できないのは当然です。しかし、バウンスが大きければ、上から鋭角に打ち込んでいっても、ヘッドは下に潜ることなく目標方向へと進んでいきます。ヘッドがしっかりとボールまで届いてくれるため、脱出することが容易になるのです。レッスンなどでバンカーではボール手前にヘッドを落としていけ!と言われますが、これもサンドウェッジには大きなバウンスがついているので、手前からヘッドを行けば大丈夫ですよ!ということなのです」(三瓶)
地面が硬いライコンディションで
ヘッドは突っかかりますか!?
最後に、バンカーとは真逆の硬いフェアウェイ、ベアグランドでのインパクト、ソールの抜けをイメージしてみてください。
「地面が固かったり、芝が薄かったりすると“ソールが跳ねそう!”と連想してしまいがち。このためこのような状況では、ボールだけをキレイに拾って打つ方法を考えるゴルファーが多いかもしれません。もちろん、それも選択肢の一つですがかなり難易度の高いショットとなってきます。では、逆に思い切って上から打ち込んでいったらどうなるでしょうか? 地面が硬いということで、ヘッドが地中深くに潜っていかない状況です。リーディングエッジから入れても、地面に刺さることなくヘッドは抜けていく可能性が高いでしょう。落ち着いて考えれば、地面が硬い状況はアイアンなどのソールバウンスが小さいクラブで打っても、ウェッジのようなソールリアクションをしてくれる、極めて“突っかかりにくい状況”であることがわかると思います。地面が硬ければ、リーディングエッジからしっかり打ち込んであげるだけでしっかりヘッドが抜けてくれるのです」(三瓶)
硬い地面=地面にバウンス効果が備わった状況だと三瓶は説明します。逆に地面が柔らかい状況では、クラブ側にバウンス効果を持たせなければなりません。これが最も柔らかいライコンディション(バンカーなど)で使用するウェッジに、特別なバウンス角が付けられている理由なのです。※ちなみにティアップしたボールを打つことを前提としたドライバーには、バウンス角は付けられていません。
バウンスの役割、効能を正しく理解していれば、悪いライコンディションへの対応も違ったものになってきます。ぜひ、バウンスを理解し、味方につけてベストスコア更新を目指していただきたいと思います。
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